<クローズアップ>

NPO法人 表皮水疱症友の会 DebRA Japan

NPO法人 表皮水疱症友の会 DebRA Japan 代表理事 宮本恵子さん

表皮水疱症は、寝返りなどのわずかな刺激でも皮膚に水疱(水ぶくれ)ができる難治性希少疾患です。重症化すると手足の指の癒着や皮膚がんが起こり、全身の痛みで自由に歩けなくなるなど過酷な病気ですが、患者が少ないことから社会的にはあまり知られていません。こうした状況のもと、「NPO法人 表皮水疱症友の会 DebRA Japan」は、日本で唯一の表皮水疱症の患者団体として、患者と家族の医療的・社会的・精神的な拠り所となるべく活動しています。脆弱な皮膚に対するケアやQOLの向上への取り組みに加え、表皮水疱症の治療研究にも協力しています。

活動の状況

専門医との出会いをきっかけに、北海道で友の会を立ち上げる

表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa:EB)は、少しの刺激や摩擦で全身の皮膚や粘膜が容易にはがれ、水疱やびらんを繰り返す病気です。欧米では、皮膚のもろさを蝶の羽にたとえて「バタフライ・チルドレン」と呼ばれ、蝶が国際支援組織DEBRA(デブラ・本部ウィーン)のシンボルマークになっています。国内患者数は推定2000人で、完治する治療法はなく、水疱処置とガーゼ交換を毎日、一生涯繰り返します。歯や口腔・食道狭窄など粘膜の障害から栄養不良や低成長も見られ、重症になると指の癒着や内臓障害のほか、感染症や皮膚がんのリスクも高くなります。 表皮水疱症は希少難病ということから、医療や教育、行政の場だけではなく周囲にも理解されないことが患者や家族の悩みであり、難病・障がいの苦しみとともに、“前例がない”という見えない壁に立ち向かいながら生きています。

私は、小学校入学時の健康診断で水疱症と診断されましたが、母が看護師のため家庭でケアができたこともあり、皮膚が弱いことを除けば、あまり病気を意識せずに過ごしてきました。しかし、10数年前に皮膚がんを発症して初めて表皮水疱症という現実を知り、命にもかかわる病気であることに直面しました。この時、主治医として遺伝性皮膚疾患の専門医である北海道大学の清水宏教授と出会い、病気のことを学び始めました。私より重症の仲間とも出会い、EB患者を取り巻く厳しい状況を痛感していたところに、清水先生から「協力するから患者団体をつくりませんか」と声をかけられ、2007年に「表皮水疱症友の会(以下、友の会)」を立ち上げたのです。

希少難病の団体として、患者のサポートと外部への発信に力を入れる

友の会として、まず全国の仲間と出会いたいとホームページを作成しました。すぐにホームページを見た全国各地の患者やその家族から電話やメールが届くようになりました。病気についての情報が少なく苦労しましたが、偶然にもニュージーランドから日本に留学するEB患者を招いて第1回目となる札幌交流会を開きました。諸外国の患者の現状や手厚い医療ケア支援、病気をもっていても人生を楽しむ生活ぶりを知って日本との格差を実感し、この交流会をきっかけに国際支援組織DEBRAに加盟しました。

その後は、患者と家族の親睦、情報収集や認知拡大を大きな目的として、全国交流会や学習会などの開催、会報やガイドブックの発行、電話相談、そして関連学会やシンポジウムへの参加などに取り組んでいます。医療アドバイザーとして皮膚科専門医、歯科医、皮膚ケアの専門ナースなどの協力を得ています。

表皮水疱症の場合、患者数が少ないうえに毎日数時間かかる全身のケアが必要なため、本人や家族も積極的に活動できる人は数少ないのが現状です。地域でも交流できるように支部や家族会も設けていますが、体調の不安定さや外出することの移動負担など頻繁な活動は難しいのが現状です。ですから、もっと外部からの支援が得られるように、病気や患者の実態を知ってもらえる機会をつくることや、地域行政や関連団体との連携を目指してのネットワークづくりに力を入れています。現在、会員数は約150名ですが、電話相談や医療者を通じてつながっている人を加えるとその倍ほどになります。孤独になりがちな希少難病の患者や家族で、患者団体に参加するという“第一歩”を踏み出せない人ともつながる必要があると考えています。

活動の成果としては、私たちの署名活動が実り、ガーゼや包帯、特定保険医療材料(創傷被覆材)等の保険支給制度が2010年に実現し、「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料」が算定されるようになりました。これにより、患者家族の経済的、精神的負担の軽減と、QOLの向上が格段に改善しました。

〝患者力〟を高め、「皮膚の障がい」という認識を広げていくために

2016年からは、障がい者への差別を禁じる障害者差別解消法の施行に「合理的配慮の提供」が義務づけられました。法整備が進む中で、私たち患者側も、「自分だけが我慢すればいい」「仕方がない」「わかってもらえない」と諦めるのではなく、一人ひとりが自信をもち、意欲を失わず、必要な支援を受けることで前向きに生きることが当然の権利であると意識することが大切だと思います。皮膚科医でも多くの医師は表皮水疱症の診療経験がありません。患者自らが自分の状況や要望を言葉にして伝えることができる“患者力”を育むことも、友の会の大きな役割です。特に小学生や若い世代の患者には、希少疾患であることは、自分たちの声で、意思で、努力で、医療者や難病環境への理解を広げ、ひいては医学の進歩に役立つという自負をもつよう折に触れて伝えています。

そして、設立10年を経た今、友の会としても新たな活動の転換期を迎えているととらえています。「いつ、どこでも、だれもが安心して公平な医療と自立支援」が受けられるよう、身体障がい者の認定基準に該当していない「皮膚機能」を加える取り組みに力を入れ、「皮膚機能障がい」という認識を広めていきたいと考えています。また10年間の活動で蓄積した情報ネットワークの構築も視野に入れています。さらに欧米の患者団体が開催するような、一般の人を巻き込んだチャリティ・イベントの開催も目指しています。

私たちは表皮水疱症という病気による脆弱な皮膚をもち、特別な医療的ケアが必要ですが、だからといって、特別な人として分け隔てをされる必要はないはずです。患者一人ひとりが希少難病の孤軍奮闘に負けることなく、生まれたことに尊厳をもち、生きる勇気や希望をもって歩んでいけるように、これからも仲間や支援してくれる人たちとの力を借りて活動していきたいと思います。

組織の概要

■設立 2007年
■会員数 約150名
http://debrajapan.com/wp/

主な活動

■表皮水疱症患者と家族の相談窓口、情報交流(電話相談など)
■社会的認知と理解を広げるための交流会、勉強会、イベントの開催
■在宅で必要とされる治療ケアのサポート(ガイドブックなどの発行)
■表皮水疱症に関する治療研究への協力、他団体との連携
■運営のための寄付金活動
■会報誌『DebRA Japan』(年1回発行)