<クローズアップ>

NPO法人 がん患者団体支援機構

理事・事務局次長 三浦秀昭/理事 古山惠子

我が国の死亡原因の3分の1以上はがんとされ、がん治療は日本の医療にとって重大な課題となっています。しかし、がん治療をめぐっては、情報不足や地域格差などさまざまな問題があり、多くのがん患者が困難な現実に直面しています。そこで今回のクローズアップは、がん患者を取り巻く状況を改善するために、がんの患者団体が連携して立ち上げた「がん患者団体支援機構」を取り上げ、事務局次長の三浦秀昭さん、理事の古山惠子さんにお聞きました。

活動の状況

「がん患者大集会」を契機として設立

現在、日本のがん患者は約130万人、経験者を含めると約200万人といわれ、今後もがん患者が増加することは確実視されています。しかし我が国のがん治療は、世界のトップレベルにある面と、未承認薬の問題など先進諸国と比較して遅れている面が混在しています。また多くのがん患者は、がん治療に関する公平で十分な情報提供が得られず、地域格差もあり、困難な現実に直面しています。

そこで、2005年に大阪で全国のがんの患者団体が集まり、「地域格差」「未承認薬問題」「医療情報の開示」をテーマに「第1回がん患者大集会」を開催しました。その反響は大きく、大集会で掲げられた「がん患者のために情報を」という共通目標は、翌2006年、国立がんセンターに「がん対策情報センター」が設立されるという形で実現に向けて進み始めました。がん患者や家族が政策立案過程に参画することが明記された「がん対策基本法」(2007年4月施行)の原点になったともいえると思います。

そして、「がん患者大集会」を継続し、がんの患者団体が連携して医療者や行政に意見や要望を訴えていこうと設立されたのが「がん患者団体支援機構」です。現在は53団体が所属しており、北海道以外の各都道府県に所属団体があります。患者団体ごとに取り巻く環境や条件も違い、抱える問題や要望も異なりますが「患者と家族が勇気と希望を持って、元気に生きていこう」という思いは同じなので、できるだけ多くの患者団体を受け入れ、さまざまな問題を共有して解決するための組織になりたいと考えています。

都から委託され、相談事業もスタート

「がん患者団体支援機構」の主な活動は、「がん患者大集会」(第2回東京、第3回広島)の開催や、患者団体活動の支援、行政への働きかけや提言の一環としてのシンポジウムや講演会の開催などで、リレー・フォー・ライフにも特別協力を行っています。

また、2007年秋からモデル事業として東京都から委託された相談事業に取り組み、都立駒込病院、武蔵野赤十字病院で、「がん患者団体支援機構」のメンバーがピアカウンセリングを行っています。さまざまな患者団体に所属する人たちが相談員となることで、がんに関する相談について幅広く対応できることが特徴です。必要に応じて、支援機構の会員にメーリングリストで呼びかけて、情報を集めて提供することも行っています。相談は「最初に告知を受けたとき」「再発・転移したとき」「進行して治療法がなくなったとき」の3つに大きく分けられます。まだスタートして間もないですが、利用者には好評で、がん患者が相談したり情報を得たりする「場」を作ることがいかに大切か実感しています。

そもそもがん患者が「がんを理解すること」は大変難しい問題です。ですから、がんを乗り越えてきた患者経験を活かして、私たちが医療者と患者の間にあるみぞを埋める役目を果たしたい、医療以外の精神面や生活面についてのサポートを引き受けていきたいと考えています。また、相談事業に取り組むことによって、個人や団体の要望や、がん患者を取り巻く問題などが把握できるので、それを今後の活動にも活かしていきたいと考えています。

「がん患者団体支援機構」がめざすもの

「がん対策基本法」が施行された2007年は、「がん医療 夜明けの年」ともいわれました。しかし、医療制度や介護保険制度の問題、緩和治療の問題など、まだまだ問題は山積しています。インターネットなどで情報も収集しやすくなった反面、信頼性の低い情報も氾濫するようになりました。地域格差についても、最近は積極的に取り組む自治体とそうでないところの差が大きく、地方に任せるばかりでなく、国が指導力を発揮してがん対策に取り組まないと地域格差がますます広がるのではないかという危機感があります。また都市部では一人暮らしの人が多く、退院後に介護する家族がいないなど、地方とは異なる問題もあります。私たちは「がん患者団体支援機構」が、「がん対策基本法」に基づいて、各地域のがん対策をチェックして、全体を見通す機関になればよいと考えています。

具体的な今後の目標としては、全国に拠点を設け、ネットワークを広げ、協議会的な組織を作っていきたいと考えています。「がん患者大集会」については、全国規模で開催する他に、地域ごとに開催してテレビ会議システムを使う案も検討中です。大集会のようなイベントだけではなく、相談事業など地道な活動を積み上げ、個別の患者が求めることや情報を把握し、課題を集約し、行政や社会に対して訴えていきたいと思います。どこに住んでいても最善・最適の治療が受けられる日本にしていくために、積極的に提言を行い、機会をとらえて国や県、その他の機関の政策立案に参画していきたいと考えています。

限られた地域だけで、あるいは特定の要望だけを訴えても、全体の課題や地域の格差は解決しません。私たちは、「がん患者団体支援機構」の活動を通じて、がん患者が連携して活動を始めていることを広め、連携することの大切さを伝えていきたい。そして、私たち自身も体力を培って、行政や医療の先の、患者でなくてはできない部分を担いたいと考えています。

主な活動

1.がんに関心を持つ人や団体の意見交換の場、提案、集約の場を作る。
2.がんの予防、検診、治療などの情報収集・調査・研究をする。
3.がんに関心を持つ人や団体への情報提供・相談・支援をする。
4.患者の立場から国や自治体、医療関係者に提言をする。

組織の概要

NPO法人 がん患者団体支援機構
■設立/平成17年(2005年)9月3日/NPO法人として登記/平成18年(2006年)4月5日
■理事長 俵 萠子氏