<特別企画>

VHO-netとともに

2001年からのワークショップを経て

ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会(VHO-net)結成(2004年)まねきねこ創刊(2004年)からの歩みを振り返る

VHO-net結成当初から活動にかかわり、まねきねこ誌面にもたびたび登場いただいた3名の方に、VHO-netとのかかわりやヘルスケア関連団体の活動についての展望などをお聞きしました。

日本における代表的なヘルスケア関連団体としてVHO-netにかかわる

長谷川 三枝子 さん 公益社団法人 日本リウマチ友の会 会長

当会は、1960年に発足以来、リウマチに関する啓発やリウマチ対策の確立と推進、患者の福祉の向上に寄与することを目的に活動してきました。VHO-netとのかかわりは、設立当初、世話人をお引き受けしたところから始まりました。当会はリウマチ患者に焦点を当てた活動を中心としてきましたので、あまり他の当事者団体との交流や接点がなく、他の団体とともに行動するのはVHO-netが初めての経験でした。

さまざまな疾病や障がいに関する団体のリーダーが集まって話し合い、悩みを共有し、学びの場をつくるという試みは興味深く、私自身、皆さんと出会って初めて、他の疾患や障がいのことを学ぶことができました。アメリカで活動されているタズコ・ファーガソンさん(アメリカ関節炎基金)との出会いも大きく、同じ疾患の団体として勇気づけられました。さまざまな医療者の講演を聞き、学びを持ち帰ることもできました。

まねきねこの誌面で皆さんの活動を知ることも楽しみでした。VHO-netを通して他団体と交流し協働するようになってから、日本難病・疾病団体協議会(JPA)などでもともに活動することが増え、ネットワークも広がりました。ただ、あくまで基本は当会での活動であり、足元での活動が確かなものだからこそ、他団体との協働やネットワークづくりも意義があると考えています。

そして、ヘルスケア関連団体の活動とは、自分の病気を通して社会とどうかかわっていくかというボランティア精神から出発したものであるべきだと思いながら、VHO-netとともに歩んできました。時代が進むに連れリウマチの治療も大きく進展し、患者の姿も変わってきました。以前は、正しい情報を届けることが当会の大きな役割でしたが、情報はたやすく得られる時代となり、早期治療で軽快する人も増え、高齢化もあって会員が年々減っています。一方で、リウマチはまだ完治はできない病気であり、情報や治療にたどり着けない患者も存在します。ですから、今は、医療を必要とする人がどこに住んでいても享受できるよう療養環境を整える活動に取り組んでいます。変わりつつある時代の中でも、患者やヘルスケア関連団体に共有する問題点を社会に発信していくのが、私たちの最も大切な役割ではないかと考えています。

VHO-net立ち上げメンバーの一人として初期からの活動を牽引

高畑 隆 さん 公益社団法人 日本精神保健福祉連盟 理事

私は、精神保健福祉士として精神障がい者の支援に取り組み、また脳性麻痺や自閉症、身体・知的障がい児などのセルフヘルプ・グループの活動や障がい者スポーツにかかわる中で、国や行政とのパートナーシップや、当事者団体のリーダーのあり方に注目するようになりました。

本来のセルフヘルプ・グループは自らの動機で参加し、一人ひとりを大切にする対等な横のつながりであるべきですが、我が国の当事者団体は、全国組織を中心とするピラミッド型の縦型組織でした。そこから脱却し、団体が生き生きとした活動を行うには、リーダー自身が視野を広げ元気になることが必要であり、疾病や障がいの違いを越えた横のつながりづくりが必要と考えるようになりました。そこで、リーダーがお互いに知り合い、気持ちを分かち合い、体験を共有し、違いを越えて横につながるネットワークづくりを目指そうとVHO-netの立ち上げにかかわったのです。

2001年に西村かおるさん(NPO法人 日本コンチネンス協会)を中心に、長谷川三枝子さん(前掲)、小林孟史さん(一般社団法人 全国腎臓病協議会)、成瀬正次さん(公益社団法人 全国脊髄損傷者連合会)、ワット隆子さん(あけぼの会)、増田一世さん(公益社団法人やどかりの里)と私の7名による世話人会が発足し、まずリーダー同士が知り合う顔合わせとしてワークショップを開催することになりました。疾病や障がいのある団体のリーダーの横のつながり、リーダー自身のセルフヘルプ・グループづくりを目指したわけです。2004年には、地域ネットワーキング活動として地域学習会が始まりました。

この十数年の活動を振り返ると、VHO-netにより製薬企業とのパートナーシップを結べるという認識が生まれたのは大きいと思います。他方、各々のリーダーや団体の体験の蓄積が進まず、ビッグデータ化していかないことを感じています。もっとVHO-netが中心となって、患者講師のトレーニングプログラムの作成や、災害時の体験の共有、リーダーシップを学ぶトレーニングなどに取り組んでほしい。住み慣れた地域で一人ひとりのつながりづくりを大切にする参加型社会システムが求められる今、VHO-netの果たす役割は大きいと期待しています。

〝情報〞をキーワードに独自の活動を展開する団体としてVHO-netでも活動

中田 郷子 さん 認定NPO法人 MSキャビン 理事長

VHO-netの活動に参加するようになった頃は、MSキャビンがNPO法人となり、活動が本格化した頃です。そもそも私がMSキャビンを立ち上げたのは、日本の患者さんに向けてアメリカの情報を翻訳して発信したことがきっかけでした。時代の変化とともに、情報の提供の仕方も変わってきました。情報誌の内容も、当初は医師に任せることが多かったのですが、患者の立場に立った情報が第一と考え、私が執筆したものを複数の医師に監修してもらう形に落ち着きました。

発足から20年ほどは、患者さんに情報を伝えていくために製薬企業などからの支援を受け、患者や医療関係者が集うフォーラムを開催するなど積極的に活動してきました。

しかし、社会の変化に伴い、「何か違う」という感覚が芽生えてきたのです。今は、氾濫する情報の中から信頼性のある情報を個人が選び取る時代です。誰でも情報発信できるようになり、SNSでも不安なやりとりが見受けられることもあります。私は、数ある情報の中で、最も信頼ある情報を提供していきたいと考えるようになりました。

そのためには、どこからも支援を受けない独立した団体となることが必要ではないかと考えて、製薬企業からの寄付を断ることにしました。経済的に独立することで信頼性を高められると考えたのです。

経済的には厳しいですが、細かい部分までできる限り節約し、個人からの寄付と書籍発行などの事業収入を中心として運営できています。今までの支援があったからこそ成長できたので、製薬企業の皆さんには感謝していますし、この一連の流れは必然的だったのかもしれません。

最終的に私が目指すのは、団体に頼らずに患者が適切な情報を選択することができ、医師に自分の希望や意見をきちんと伝えられる文化が育まれることです。患者一人ひとり、市民一人ひとりが情報の見極め方を会得できる文化となってほしいと考えています。

そうなったときには、もしかしたらMSキャビンは不要になるかもしれないと思っています。

※MSキャビンは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎)(NMOSD)に関する情報を提供する団体