<クローズアップ>

認定NPO法人 アンビシャス

認定NPO法人 アンビシャス 理事長 迫 幸治 さん
認定NPO法人 アンビシャス 副理事長 照喜名 通 さん

「難病患者よ大志を抱け」のスローガンのもとに、すべての難病患者のQOL(生活の質)向上に向けてアンビシャスは、2001年、沖縄県那覇市で任意団体として発足しました。その後、NPO法人化、沖縄県難病相談支援センターの事業委託を経て、2009年には国税庁認定NPO法人へ。数々の事業を通じ、難病患者の自立支援に向けて活動の幅を広げています。多様な業種のメンバーによる役員構成、幅広く賛助会員を募り、寄付も活用するなど独自の運営形態で委託事業や自主事業を展開しています。設立当初から理事長を務める迫幸治さんと副理事長で相談員でもある照喜名通さんにお話を伺いました。

活動の状況

多業種の役員で構成する事業感覚での運営を目指して

認定NPO法人 アンビシャス(以下、アンビシャス)の特徴のひとつは、団体の方向性を決定する役員7名が企業の代表、弁護士、ファイナンシャルプランナーなど多業種の人々で構成されていることです。患者当事者はそのうち2名です。経営やIT、法律のエキスパートを交えて、設立以来毎月1回、必ず理事会を開いて方針を練ってきました。スタート時は患者も会費を払う会員制でしたが、すぐに「支援される側はお金を払わなくていい」という意見が出て、会費制をやめました。個人の賛助会員を募り、会費(1000円、後に3000円)で運営するように体制を整えていきました。 「経営スキルのある人で役員を構成するのはアメリカの患者団体では普通の考え方。広く社会の中から理事のメンバーを集め、議論する。アンビシャスは日本では珍しい業態だ」とある人から言われたことがあります。

発足当時、沖縄県には全国膠原病友の会 沖縄県支部と沖縄クローン病・潰瘍性大腸炎友の会の2つの患者団体しかありませんでした。そこでアンビシャス設立のためにライオンズクラブや異業種交流会などに積極的に出席し、思いを伝えていった結果、ただ寄付をするだけでなく、サポートの意義を感じて企業活動のようにとらえ、積極的に運営に参加してくれる支援者にも出会い、このような役員構成が築きあげられたと思っています。

沖縄県ならではの防災対策
台風による停電時の電源確保に注力

2005年には県からの難病相談・支援センター委託事業を開始しました。電話相談、患者団体支援、就労支援、行政との連携など、発足時に私たちが構想していたシナリオと合致した事業となりました。長らく相談員1名で対応し、県からの委託金も減少傾向にありましたが、2015年に難病法が施行されて指定難病の数が増え、委託金も増加したことで相談員を2名にすることができました。

沖縄県では台風に備えての防災対策は必須です。アンビシャスでは停電に備え、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者や、小児慢性疾患の子どもたちの人工呼吸器用の電源確保を推進してきました。2013年に県から「人工呼吸器用外部バッテリー等(発電機含む)貸与事業」を受託し、発電機と人工呼吸器の純正バッテリーを無償で貸与する事業を開始。約3年間で42台(うち小児慢性疾患用13台)を貸与しています。全国でもトップクラスの実績だと自負しています。ただ、県からは機器の貸与に関する補助金の給付だけなので、消費電力の知識などを含めた使い方やメンテナンスなどのフォローはアンビシャスの自主事業として無償で行っています。もちろん離島からの要請もあり、交通費もかかります。それらの費用は委託金ではなく、すべて賛助会員の会費や寄付で賄っています。

保健所やハローワークと連携し、患者団体設立や就労を支援

アンビシャス発足時には2団体だった沖縄県の難病患者団体は、15年後の2016年には17団体に増えました。 もちろん患者当事者が熱い思いをもって発足した団体もありますが、アンビシャスでも立ち上げ支援を行ってきました。その手法は県内に6ヶ所ある保健所との強い連携を要するものです。難病患者の個人情報は保健所がもっています。各保健所主催でさまざまな難病の医療講演会が開催され、その後に交流会があります。そこにアンビシャスが出向き、「指定難病は300以上あります。次にあなたと同じ疾患の人と出会う機会は保健所主催ではなかなか巡ってきません。そのために友の会のような集いの場をもちませんか。アンビシャスはそのお手伝いをします」と伝えます。2016年には4つの団体が集まり、アンビシャス主催で集いの会を開催しました。私たちはこの方法を「公設民営方式」と言っているのですが、継続する団体もあれば1度だけの集まりで消えていく場合もあります。お膳立てをするのと、自らの意志で立ち上げるのとでは思いが違う。その点は悩ましく、新たな作戦を考えている段階です。

ハローワークとの連携では、毎月1回難病患者就職サポーターがアンビシャスに出張し、「難病就労相談会」を開催しています。相談しやすい雰囲気をつくるように工夫していますが、就労は疾患の程度や本人の働く意欲などによって千差万別です。「難病だから就労できない」という気持ちを、まず解いていくことが大切だと思って取り組んでいます。

常に成長していくこと
それがアンビシャスにとっての使命

アンビシャスでは、那覇看護専門学校、ぐしかわ看護専門学校の学生実習を受け入れています。難病に関する法律や患者団体の説明、傾聴を意識した相談場面のロールプレイなどを行っています。相談者と相談員に扮し、役割を交代しながらさまざまな状況の打開策を探っていくもので、学生の反応に勉強させられることも多々あります。

2016年はクラウドファンディング※1を利用して、神経難病や気管切開で手や声の機能障がいのある人のために、高額な視力入力装置を購入することができました。沖縄県内のみならず全国の方々から集まった寄付金は240万円と目標を大きく超すことができました。

VHO-netとのヒューマンネットワークも大きな力になっています。慶應義塾大学看護医療学部の加藤眞三教授には会報誌『アンビシャス』に寄稿していただき、2016年3月には沖縄に招いて、市民公開講座を開催することができました。

また、理事会に議題を提出し、難病患者や障がい者への支援を常に模索しています。課題もたくさんあります。就労支援員を1名確保するために県に対して委託金を増やしてほしいと要望していますし、就労継続支援B型作業所※2の立ち上げも長年計画していますが、実現できていません。それでも、アンビシャスは常に成長し、バージョンアップしていきたいと考えています。多くの賛助会員や企業、一般市民の寄付に支えられ、その期待に応えられるよう、常に「真摯であれ」と気を引き締めて活動しています。

※1 クラウドファンディング:

群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。インターネットを通じて不特定多数の人から資金の出資や協力を募ること。

※2 就労継続支援B型作業所:

一般企業への就職が困難な障がい者に就労機会を提供し、生産活動を通じて、知識・能力向上に必要な訓練などの障がい福祉サービスを供与する施設。雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」の2種類がある。

組織の概要

■設立 2001年(2002年NPO法人に移行、2009年国税庁認定NPO法人)
■法人賛助会員 32法人
 個人賛助会員 62名(2015年度)

主な活動

■難病患者への電話・面談相談、就労支援、患者団体支援
■沖縄県難病相談支援センター事業、人工呼吸器用外部バッテリー等(発電機含む)貸与事業の委託
■会報誌『アンビシャス』発行(月刊)