<クローズアップ>

腎性尿崩症 友の会

事務局長 神野啓子

腎性尿崩症は40万人に1人という稀少難病であるため、診療できる専門医も少なく、入手できる情報も限られています。今回は、腎性尿崩症の認知向上を目指して活動をしている事務局長の神野啓子さんにお話をうかがいました。

活動の状況

腎性尿崩症と伴うリスク

腎性尿崩症は、「ろ過をして尿を減少させる」という脳からの命令に腎臓が反応しないため、薄い水のような尿が絶えず放出されてしまう病気です。著しい喉の渇きなど脱水症状を伴うため、多量の水分補給を行うのですが、すぐに膀胱が一杯になるので、頻回にトイレに行かなければなりません。膀胱の状態を放置しておくと、尿が腎臓に逆流する水腎症などを引き起こしてしまいます。

逆に、自力で水分補給ができない乳児などは、脱水症状の繰り返しから軽度の発達遅滞になってしまうことがあるため、早期診断が重要となります。

また、突発的な意識障害や麻酔を使用する手術の際にも、医療側に疾患情報が的確に伝えられていないと、長時間にわたる脱水症状から生命の危険に繋がることがあります。

腎性尿崩症の発症起因は、主に伴性劣性遺伝という遺伝形式で、母親がキャリア(保因者)の場合は二分の一の確立で男児に発症し、常染色体劣性遺伝(両親がキャリア)の場合は、男女を問わず四分の一の確率で発症します。母親のみがキャリアという割合が全体の9割を占め、しかも出産後に判明する疾患であるため、母親が自分を責めてしまったり、家族や親戚の理解を得られなかったりしてしまいます。

稀少難病であるがゆえに医療側の体制も不十分

私の長男は生後11カ月で、次男は生後1カ月で腎性尿崩症と診断されたのですが、医師も医学書からの知識しかなく、一般に入手できる情報も皆無に近いものでした。それでも、緊急時に頼れる病院が近くにあれば安心だろうと思い、奈良県から小児保健センターのある大阪府に転居しました。あるとき、次男が脱水から痙攣を起こし、急いでセンターに連れていきました。しかし、主治医が在勤しておらず、直接連絡を取ったところ「一般救急に連れて行きなさい」と指示を受けました。この時、なんのための引っ越しだったのかと病院の体制に疑問を持ち始めました。

そして1997年、医療側に腎性尿崩症の情報が的確に伝わっていなかったため、高校1年生になった長男を手の骨折の手術で亡くしました。

長男の残してくれた情報を大切に活用

長男の死は、この病気と付き合っていく難しさ、病院や医師との対応方法など、たくさんの情報を残してくれました。そこで、腎性尿崩症のことをもっと多くの人に知ってもらおうと、長男の経過を綴ったホームページを開設しました。しばらくすると、同じ疾患を持つ子どもの親から複数のアクセスがあったため、2000年に「腎性尿崩症友の会」として正式に発足することを決意しました。現在は23家族、キャリアも含めて26人の患者さんがいます。

会報で情報発信し専門医参加の勉強会も開催

会の発足当時も依然、情報は少なかったのですが、会員の1人から東北大学に専門医がいるということを教えてもらい、実際に訪ねて始めて疾患についての詳しい説明を受けました。また、その際に他の先生も紹介していただき、その先生からも情報を集めていきました。今はこうして集めた情報を、年2回発行する会報『しょんべん小僧通信』で会員や医療者に発信しています。会報には「ママーズ・ハート・ストーリー」という、患者の母親が気持ちを綴るコーナーもあり、診断されたときから始まる不安、夜も2時間ごとに子どもを起こしトイレに行かせる苦労、健常者なら迷うことなくできる手術に踏み切れない葛藤など、毎号正直な思いが掲載されています。会報を読んだ先生から「大変さが初めてわかった」と直筆の手紙をもらったときはうれしかったです。

会報の他には、会員間だけのコミュニケーション・ツールとして『友の会レター』を年2〜3回、発行しています。こちらはかなりプライベートな悩みも記載されており、会員間の情報交換や励ましの場となっています。 イベントとしては、年1回の総会、専門医を招いて勉強会、個別相談会を開いています。

団体同士の交流で得た活力と仲間

2002年に、初めてヘルスケア関連団体のワークショップに参加しました。当時、会の運営でとても悩んでいたのですが、話を聞いてもらう機会となり、私のしていることは間違いではないと気づかせてもらいました。また、腎性尿崩症には、軽度の発達遅滞の子どもがいる関係で、発達障害のヘルスケア関連団体に講演をお願いし、子育ての参考にしました。 現在、ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会関西学習会では毎回、模擬講演が行われており、関西学習会の主要テーマである「患者の声を医学教育のカリキュラムに組み込む」活動の一つとして、腎性尿崩症の模擬講演を行っています。また、「患者がつくる医学の教科書」のプロジェクトにも執筆協力をさせていただいています。

最優先すべき課題は疾患の認知向上

これらの活動を通じて、私たちは、医療者に対して腎性尿崩症の認知度を上げることを目指しています。医療者が疾患を理解していれば、子どもが腎性尿崩症であると診断されても、親は安心して育てることができます。また、医療機関の受け入れ体制が整っていれば、祖父母や親戚に子どもをあずける際に「怖くてあずかれない」と言われた場合でも、「トラブルがあったときは病院で対応してくれるから」と頼ることができます。

最終目標は国の研究事業指定

腎性尿崩症友の会の会員は、患者である小さな子どもを持つ親が多く、その人たちが中心となって運営し、会員のニーズに合うように変化していくのが理想的です。しかし、現実は育児の手が離れず運営スタッフとしてなかなか活動できません。世代交代は必要ですので、なるべく若い親にも関わってもらい、地道に疾患の認知度を上げる活動を続けていきたいと思っています。今はまだ基礎作りの段階ですが、今後はやはり難治性疾患克服研究事業に指定されるような活動もしていかなければならないと考えています。腎性尿崩症に生まれて亡くなった長男に教えられたことを広く伝えて、同じ病気を持つすべての子どもを助けるためにも活動を続けていきたいと思います。

主な事業

■総会:年に1回
■会報発行:年2回
■友の会レター(会員向け):年2〜3回
■宿泊交流会の開催
■専門医の開拓と医学的情報の収集

組織の概要

■設立/2000年10月
■会員数:23家族