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長谷川 三枝子 さん 公益社団法人 日本リウマチ友の会 会長

リウマチは手指のこわばりや関節痛、腫れなどが起こる自己免疫疾患のひとつで、重症化すると関節の変形や破壊を伴う。全国の患者数は約70万人と推定され、4対1の割合で女性に多く発症する。近年、治療薬の開発により、早期治療によって「寛解」を目指せるようになった。

5年ごとに作成する「リウマチ白書」をベースに自らの体験を加味して語る

日本リウマチ友の会は、リウマチに関する正しい知識を広め、すべてのリウマチ患者にとってより良い療養環境を整えることを目的に1960年に発足しました。活動の歴史も長く全国的な患者団体であることから、医療関連学会のシンポジウムや教育の現場などで講演や発表をよく依頼されます。最近多いのは、看護学部や薬学部、社会福祉系の学生、自助具などの開発に取り組む工業デザイン系の学生を対象とした講演、製薬企業の社員研修、薬剤師や介護士の研修などです。

患者講師を依頼された場合、私が心がけているのは、患者団体という背景を忘れないこと、先方が求めている目的を常に意識することです。そして話す内容の柱にしているのは、当会で5年ごとに発行している「リウマチ白書」です。毎回、リウマチ患者の実態や課題について詳細に調べていますので、白書の内容をベースにし、自分の経験を重ねながら語ります。また、求められている目的や時間に応じて取り上げる内容を調整し、看護学生に語る場合は患者と看護の接点、薬剤師が対象の場合は治療薬開発の影響というように、聞く人に関連する部分をクローズアップすることもあります。原稿は作らず、あらかじめ話す内容や流れをイメージしておきます。そして、あくまでも患者団体という立場ですから、医療に関してのコメントはしないことを原則としています。

地域での講演依頼に対応するため講演研修や資料作成で支部長をサポート

地域での講演依頼の場合は、支部長やそれに準ずるリーダーが対応しています。各地の気候風土の中で実際に生活している人が発信することが大切ですし、患者自身も講演や発表を行うことによって自分の体験の整理や有意義な振り返りができるので、積極的に取り組んでほしいと考えています。

ですから本部からのサポートとして、「リウマチ白書」をベースに患者の実態や医療、福祉の課題などを紹介する資料(プレゼンテーション用ソフトウェアの原稿)を作成して提供し、支部長会や支部運営説明会などで資料の使い方や講演についての研修も行っています。看護学生向け、介護士研修用などのテーマ別に作成した資料も用意しています。

初めて講演や発表をする人には電話などでアドバイスすることもありますが、その人なりの持ち味も大切にしたいので助言はほどほどにし、自分のやり方で挑戦してほしいと伝えています。「リウマチ白書」をベースにすることにより、人前で話すことに慣れていない人も取り組みやすいですし、また聞く人にとっても多くの患者の姿をとらえることができるのではないかと考えています。

患者講師の活動を通してより良い社会づくりに貢献

伝えるためのコツ最近、医療や福祉の仕組みがめまぐるしく変わり、地域包括ケアシステムが構築される中で、患者など当事者の立場からの情報発信が必要不可欠になってきています。リウマチ患者にとっての不自由や悩みごとは、高齢者と共通することも多いので、患者講師の活動を通して、私たちの経験や要望を専門職の方へはもちろん、広く社会に伝えていくことはひとつの役割ではないでしょうか。

今後の展望として重視したいのは、患者講師として、教育現場で若い世代へ向けた活動をしていくことです。これから医療や福祉の現場を支える方たちに患者の声を届けることは、社会に最も還元されることにつながると思うからです。

多くの患者の声を発信し、社会をより良く変えていくのが患者団体の役割です。リウマチ患者だけでなく、ほかの多くの患者や高齢者にとっても暮らしやすい社会づくりに、私たちの活動が役立つことを期待しています。