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猪井 佳子 さん NPO法人 日本マルファン協会 副代表理事

マルファン症候群は先天性の遺伝子疾患で、細胞をつなぐ結合組織に障がいを有し、骨格、眼、心臓、血管などに症状が出る。どの部位に出るか、またその程度も個人差が大きく、発症時期もさまざま。自覚症状がないこともあり、突然、心臓血管系に症状が現れ、大動脈瘤や大動脈解離など重篤な症状となり、命にかかわることもある。日本では約1万5000〜2万人の患者がいると推定され、そのうち75%は親からの遺伝、25%は孤発性として生まれる可能性がある。

患者講師にとっても聞く側にも双方のモチベーションが上がることを実感

マルファン症候群は症状が多岐にわたり、命にかかわる重い症状が出るまで気づかないこともあります。私の場合も、娘がマルファン症候群だと診断されたことで検査を受け、この病気であることがわかりました

日本マルファン協会では「情報は命を救う」「情報は生きる支え」を基本理念に、幅広く啓発活動を行っています。その一環として、患者講師の活動はとても有益だと思っています。私が初めて人前で話したのは、2000年に患者のアンケート結果を報告した時でした。内科医の先生が対象でしたが、先生方もマルファン症候群を診察することが少なく、まして患者から直接、話を聞くのも初めてで貴重な体験だったようです。とても熱心に聞いてくださって私自身も驚き、そして、患者が話すことで双方のモチベーションが上がるということを実感しました。

その後、患者講師による模擬講演に取り組んでいるVHO-netの関西学習会と出会い、私も講演する機会を与えられ、参加メンバーからさまざまな感想をいただきアドバイスをもらいました。私にとって、良い出会いでした。

患者団体を代表して自分の体験以外のさまざまな患者の事例を伝える

関西学習会のメンバーはすでに、学会や、医学部・看護学部の学生、一般の人を対象に患者講師をしている人が多く、そのつながりから私も声をかけてもらい、講演する機会が増えていきました。今は主に関西の医学部・看護学部の学生を対象に、少人数のゼミや、時には生徒が100人を超える授業で話すこともあります。また、関西学習会のメンバー3〜4人で、各15分間の講演を行い、その後にグループディスカッションを行うというケースもありました。その時は、みなで話す順番や内容について事前に打ち合わせを行いました。依頼される先生方からは、疾患説明よりも患者の生活に重点を置いて話してほしいという要望が多いですね。患者ならではの視点に立った、教科書に書かれていない現状を知りたいということだと思います。

また、自分の体験以外にも、いろいろな患者の症状や体験を盛り込むようにしています。それが患者団体を代表して講演することであり、団体としてやるべきことと考えています。

質疑応答の時間を組み込みそこからのフィードバックを大切にする

伝えるためのコツ講演原稿や発表スライドを作る時は、与えられた時間のことをまず考えます。90分、60分、15分などさまざまで、短い場合は一番伝えたいことをメインに、後はそこに補足していきます。長い場合はたくさんエピソードを入れられますが、飽きさせないように工夫しています。そこで、関西学習会で作成した『「患者・家族が語る」講演のポイント チェックリスト』は、とても有効です。特に時間が短い場合、ポイントを集約するのに役立っています。みなさんもぜひ、活用してほしいと思います。

マルファン症候群を語る時のテーマは多様です。遺伝疾患、就労、寛解していても急な手術になる場合があること、子どもへの対応…。その時々でどのテーマをメインにするかを考えます。私は、話したいことがたくさんあっても、時間内に質疑応答の時間を必ず組み込むようにしています。その時間は削りたくありません。話を聞いてくれた人がどんな感想をもったか、あるいはどういう質問が出るか。つまり、フィードバックですね。患者だけの問題でなく、医療関係者、医療・福祉制度、社会全体の問題もある。それらの意見から「患者団体が次に目指すもの」が見えてきます。そのような声が聞ける機会なので、講演はとても大切にしたい活動です。