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広野 ゆい さん NPO法人 DDAC(発達障害をもつ大人の会) 代表

発達障害とは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害、LD(学習障害)、そのほかこれに類する脳機能の発達に関する障害。知覚・理解・記憶・推理・問題解決などの知的活動分野において、高い部分と低い部分の差が大きく、特性に合う環境があれば適応し、能力を発揮することができる。青年期までの疾患とされてきたが、成人後にも自尊心の低下やうつ病などの二次障害によって、社会での生きづらさを感じている現状がある。

法制度の改正で行政や企業を対象とした講演が増えている

近年、発達障害という言葉がメディアなどでもよく使われ、子どもだけでなく、大人も発達障害と診断されることが多くなりました。社会生活を送る中で、同じミスを何度も繰り返す、上司や同僚とのコミュニケーションがうまくできない、時間の管理が苦手で大事な予定を忘れてしまうなど、ADHD、ASD、LDのそれぞれに特性があります。今は医学的にこの3グループに分けられていますが、重複することも多く、タイプは一人ひとり違うといっても過言ではありません。

2006年に障害者雇用促進法が改正され、障害者手帳を持つ精神障害者も法定雇用率の枠内に入りました。その頃から、行政、企業の一般管理職や社員向けの人権研修、障害者雇用研修での講演依頼が増えました。発達障害という分野が比較的新しく、どういった障害で、どう対処すればいいのかわからず、インターネットで検索すると当会に辿り着くという流れでした。

講演を重ねることで自信をつけ事前の情報収集によってニーズに応える

講演を始めた頃は原稿を作り、それを基に90分用の発表スライドをまとめておりましたが、今ではスライドを見ながら講演ができるようになりました。講演時間が60分、30分と短くなれば、内容を90分用から取捨選択していきます。

依頼時に、どのようなニーズに応えて話をするのか、事前情報をできるだけ聞き取ります。現場でどんな問題が起こり、困っているのか。それに応えられる話をしたいと常に心がけています。私はASDとADHDが両方あるタイプで、自分の言いたいことを一方的に話すのは得意です。それでも、講演を始めた頃は恐くて、パソコンに隠れて話していました。そのうち、「よくわかった」「職場で悩んでいたことが腑に落ちた」などの声をもらって少しずつ自信がつき、内容を精査したり、話し方のトレーニングを積んだりして、経験を重ねて演者として成長しているかなという実感があります。2016年は大企業の正社員2000人を対象に、500人ずつ4日間にわたって人権研修での講演をするという経験もしました。

すべての人に合理的配慮ができる社会づくりを、ということを伝えたい

伝えるためのコツ2014年に障害者権利条約が日本で批准され、「合理的配慮」が注目されるようになり、そのことについて話す機会が増えました。私は、たとえ発達障害の特性が強い人のケースでも、その障害を配慮し活かす環境をつくれるかどうかということは、本人の問題というだけではなく周りの人間の問題でもあることをお話ししています。企業が思い通りの人材を採用するのではなく、採用した人間をどう活かせるかが課題であり、少子高齢化で労働人口が減少していく現状から、企業側もそれを重視していると感じます。もちろん質疑応答では、職場での目の前の問題にどう対処すればいいか、知的・精神障害者とどこでラインを引けばいいのかという質問もあります。そのような方には、行政などと協働して作成してきた『発達凸凹(でこぼこ)活用マニュアル』などの冊子も参照してもらうように伝えます。

本来は、障害のある人だけが特別扱いされるのではなく、すべての人が合理的配慮をされるべきなのです。みながより良い働き方、生き方ができる中で、障害者はそこに適応するのが困難なところもあります。そこからが、障害者に対する合理的配慮であってほしいのです。すべての人の特性を多様性として受け入れる社会を目指したいということを、患者講師としてこれからも伝えていきたいと思っています。

※合理的配慮

障害のある人の人権が、障害のない人と同じように保障されること。
教育や就業など社会生活において平等に参加できるように配慮すること。