<トピックス>

JPA研究班による厚生労働省の難治性疾患等克服研究事業
患者が主体的に難病研究に参加する患者情報登録「患者レジストリ」がスタート

患者が主体となり、自らの疾患履歴や日々の症状を随時パソコンで入力し、蓄積されたデータを治療法や新薬などの研究開発に役立てていく。厚生労働省にとっても初の試みである患者主体による患者情報登録サイト〈J-RARE.net〉(以下、患者レジストリ)が2013年9月25日、4つの疾患を対象にスタートしました。
11月2日には大阪大学中之島センターで患者レジストリ説明会が開かれ、その意義や登録への呼びかけ、データ活用についての説明がありました。まねきねこでは、患者レジストリ構築にかかわった研究者の森田瑞樹さん、医師の側から協力する森崎隆幸さん、対象疾患の患者団体である日本マルファン協会の猪井佳子さんにお話を伺い、トピックスとしてお届けします。
患者と治療研究の距離を縮めるツールを目指して

東京大学 ソーシャルICT研究センター 特任研究員 JPA研究班 研究分担者 森田 瑞樹 さん

2011年、厚生労働省は難治性疾患等克服研究事業の一つとして初めて患者主体の研究班を立ち上げ、公募を行いました。JPAがそれに応募したわけですが、以前から研究者として患者レジストリの可能性を展望していた私に声がかかり、研究分担者として患者レジストリの枠組みづくりから参加することになりました。まずはモデルケースとしての疾患選びの作業から始まりました。すでに臨床調査個人票の対象となっていた特定疾患は候補から除き、患者団体が存在し専門医としっかりリンクしている疾患などいくつかの条件を設定し、JPAを通して募集をかけました。その審査で選ばれたのが現在の4疾患です。 登録にあたっては、患者レジストリの質を担保するために、まず、主治医の方に病名を確認していただきます。自分の病名を正確に把握していない方がいることや、また研究が進み類似疾患が解明されていながら診断されていない場合もあるので、それを確認するために、最低1回は医療機関に行かなければなりません。疾患や症状によっては年に1度くらいしか病院に行かない人もいますので、登録へのハードルが高くなりますが、これは譲れないことでした。 患者主体で入力していく項目は、私が専門医の方々と相談しながら考えました。内容は、 ①これまでの疾患履歴 ②検査結果や医療費などの診療の記録 ③血圧などの日々のデータと日常生活 での主観的な気づき の3分野に大きく分かれます。リストアップした項目をさらにそれぞれの疾患の専門医、患者団体の担当者と検討し、取捨選択をして入力項目を決めていきました。 このようにして構築された患者レジストリは、2013年9月25日に登録を開始しましたが、現在までに登録された患者数はまだまだ理想とする数には至っていません。 厚生労働省の助成は2年間、2014年3月で終了します。もちろん次年度の研究助成の申請も行っていますが、申請が通らなくても登録システムはJPAで維持管理できるようにしています。登録された患者さんにはこのレジストリをうまく利用し、自分の病状の把握や健康管理に使い、エンパワーメントしてほしいですね。その一方で、私たちは集積したデータを国に、医療機関に、研究者に届け、さらにJ-RARE.netからも統計情報などを公開し、患者さんと臨床研究や基礎医学研究との距離を縮める役割を果たしていけたらと考えています。

JPA研究班とは
JPA研究班とは正式名称「患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究」班。
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)を中心とした厚生労働省の難治性疾患等克服研究事業(2012〜13年度)で、その研究課題の一つとして患者情報登録(患者レジストリ)を行っています。
対象疾患:遠位型ミオパチー/再発性多発軟骨炎/シルバー・ラッセル症候群/マルファン症候群
患者と治療研究の距離を縮めるツールを目指して

東京大学 ソーシャルICT研究センター 特任研究員
JPA研究班 研究分担者 森田 瑞樹 さん

2011年、厚生労働省は難治性疾患等克服研究事業の一つとして初めて患者主体の研究班を立ち上げ、公募を行いました。JPAがそれに応募したわけですが、以前から研究者として患者レジストリの可能性を展望していた私に声がかかり、研究分担者として患者レジストリの枠組みづくりから参加することになりました。まずはモデルケースとしての疾患選びの作業から始まりました。すでに臨床調査個人票の対象となっていた特定疾患は候補から除き、患者団体が存在し専門医としっかりリンクしている疾患などいくつかの条件を設定し、JPAを通して募集をかけました。その審査で選ばれたのが現在の4疾患です。

登録にあたっては、患者レジストリの質を担保するために、まず、主治医の方に病名を確認していただきます。自分の病名を正確に把握していない方がいることや、また研究が進み類似疾患が解明されていながら診断されていない場合もあるので、それを確認するために、最低1回は医療機関に行かなければなりません。疾患や症状によっては年に1度くらいしか病院に行かない人もいますので、登録へのハードルが高くなりますが、これは譲れないことでした。

患者主体で入力していく項目は、私が専門医の方々と相談しながら考えました。内容は、
①これまでの疾患履歴
②検査結果や医療費などの診療の記録
③血圧などの日々のデータと日常生活 での主観的な気づき
の3分野に大きく分かれます。リストアップした項目をさらにそれぞれの疾患の専門医、患者団体の担当者と検討し、取捨選択をして入力項目を決めていきました。

このようにして構築された患者レジストリは、2013年9月25日に登録を開始しましたが、現在までに登録された患者数はまだまだ理想とする数には至っていません。

厚生労働省の助成は2年間、2014年3月で終了します。もちろん次年度の研究助成の申請も行っていますが、申請が通らなくても登録システムはJPAで維持管理できるようにしています。登録された患者さんにはこのレジストリをうまく利用し、自分の病状の把握や健康管理に使い、エンパワーメントしてほしいですね。その一方で、私たちは集積したデータを国に、医療機関に、研究者に届け、さらにJ-RARE.netからも統計情報などを公開し、患者さんと臨床研究や基礎医学研究との距離を縮める役割を果たしていけたらと考えています。

J-RARE.net(ジェイ・レア・ネット)とは
http://j-rare.net
厚生労働省の支援の下でJPA研究班が構築した、インターネットを利用して患者が自らの意志で情報を登録し蓄積する患者情報登録サイト(患者レジストリ)。医療機関では臨床研究などのために医師によって患者の情報が蓄積されていますが、J-RARE.netでは、患者自身が症状や薬の副作用、日常生活で気がついたことなど、病気に関するさまざまな情報を自ら登録することによって、患者の視点に基づいた多様な切り口から、その病気の実体に迫ることができると期待されています。
対象疾患:遠位型ミオパチー/再発性多発軟骨炎/シルバー・ラッセル症候群/マルファン症候群
病気の実体をさらに把握していくために

国立循環器病研究センター 部長
JPA研究班 研究分担者 森崎 隆幸 さん

私はマルファン症候群の専門医ですが、患者レジストリの話を日本マルファン協会の猪井さんから聞き、患者主体の登録制度は初めての取り組みなので、研究分担者として協力することになりました。患者レジストリは患者さん自身の主観で書き込めるのが大きな特徴です。医療者側から見ると、たとえばある薬の効果に関するデータがあり、結果としては良い方向に持っていけると予想できても、患者さんにとっては日々の生活の中で軽い副作用やつらい面も出てくるというケースがあり得ます。医師の客観的な診察だけでは得られない情報を拾っていくことができれば、よりはっきりと病気の実体を把握していくことが可能となります。

今、日本国内のマルファン症候群の患者数は約2万人と推定されています。その1%、200人から数百人レベルの人たちが登録してくれると、ある程度の成果が出てくると思っています。当センターにも年間約400人が来院していますので、私も外来患者さんに常に患者レジストリのパンフレットを渡し、登録を呼びかけています。患者さんが自分の病気のことをよく知り、自分で管理するという意識を持つ良い機会にもなると思います。また、マルファン症候群は、名前は知っていても診察したことがないという医師も多くいます。孤発性の場合もありますが遺伝性の強い病気のため、患者の家族も含めてフォローしていくことが大切なので、医療者に対しての情報提供ツールとしても大いに有効です。

医療者や研究者は病気を診療しながらデータをレジストリとして蓄積・共有していますが、それに今後、この患者主体によるレジストリをうまくリンクしていくことが、治療の進歩や創薬につながっていくのではないでしょうか。今回の患者レジストリがそのスタートになればと願っています。

登録者が一人でも増えるよう患者団体でサポートしていきたい

NPO法人 日本マルファン協会
代表理事 猪井 佳子 さん

患者レジストリに参加するためには、まず自分自身のこれまでの病歴を細かく入力しなければなりません。医師の使う言葉と患者がわかる言葉の違いもあり、病態についてうまく理解できない人もいます。しかし、難しいからといってその項目を省いてしまうと、本当は自分にその症状があるのに気づかないというケースも出てきます。森崎先生や森田先生と項目を検討しながら、同時に会員の中でも話し合い、わかりやすく、不正確にならないレジストリを目指しました。同じような症状で同じ薬を飲んでいるのに、しんどい人もいれば気にせずに生活できている人もいます。そういう部分もわかってくればいいなと思います。

まだまだPR不足で、患者レジストリの意義が伝わっていない人や、インターネット登録に怖さを感じている人もいると思います。説明会などで啓発を行い、登録者を増やしていきたいですね。まだ始まったばかりで問題点はありますが、登録者が増え、さまざまな情報がフィードバックされるようになることを願っています。病気についての確かな情報が患者レジストリから得られたら、患者団体はその分のマンパワーを別のことに使うことができるとも期待しています。

まねきねこの視点

国、NPO法人、医療機関、患者団体が連携し、日本で患者主体のレジストリが本格スタートしたことは大きなトピックスです。これまでのVHO-net※の歩みの中でも、患者が声を上げ参加することで、『患者と作る医学の教科書』の作成や、患者講師による授業などの成果につながってきました。今はまだ対象疾患は4つですが、この数が増え、一人でも多くの患者さんが登録し、創薬や病気の進行を抑えられる治療法などにつながっていくように期待したいと思います。