<患者の力>

医師の目から見た患者力とは

患者さんが自分の健康を回復・維持するうえで、患者力が果たす役割が想像以上に大きいことを、私は患者会の集会に参加する中で学びました。患者力は身体、心理、社会、スピリチュアルと、四つの次元からさまざまな局面で発揮されます。ここでは、特に重要と思われる患者力について、述べたいと思います。

社会的関係性の重要さ

患者さんを支えてくれているような社会的関係性の強い人は、死亡率が低く寿命が長くなり、しかも元気なことが報告されています。家族や友人、信頼できる医療者、同じ病気をもつ仲間などの社会的なつながりをもつことは、患者にとって大きな力になります。つらい時に親身に聴いてくれる人。何らかの重大な決断をしなければいけない時に相談に乗ってくれる人。相談では助言するというよりも一緒に考えてくれる人。本心から望んでいることを実現するために何ができるのかを一緒に考えてくれる人。このような人を身の周りにもつことが大切です。そのためには、自分自身がオープンな態度でなければなりません。

医療者との関係性

患者と医療者の関係性をつくるのも患者力です。まず、自分に合う主治医を探すことから始めてください。できれば、自分と同じような考え方の医師がよいでしょう。たとえば、糖尿病なら、薬で治すのか、生活習慣の改善で治すのかなどは、主治医と患者の考え方が一致しているとうまくいきやすいのです。

難病など特殊な病気では、その病気の専門医が少なく、そうも言ってられないかもしれません。それなら気軽に相談できるかかりつけ医を身近にもち、二頭立てで療養することも一案です。

医療者に遠慮をしているだけでは、病気を前にして進むことはできません。かといって、医療者に過大な要求を突きつけるだけになっては、療養生活もうまくいかないでしょう。お互いが尊重できる関係性をつくることができれば理想的だと思います。

自分の本心は何処にあるのかを知る

医療者や周りの人に自分が大切にしていることを伝えることが大切です。その前に、自分が本心から望んでいることを突きつめることが必要でしょう。「ニーバーの祈りの言葉」※を繰り返している間に、自分ができること、できないことを見分けられ、できることには勇気をもって進むこと、そして、できないことは受け入れていく落ち着きをもつことができるのかもしれません。そこに、自分の本心が見えてくるのではないでしょうか。

加藤 眞三 さん プロフィール

1980年慶應義塾大学医学部卒業。
1985年同大学大学院医学研究科修了、医学博士。1985~1988年、米国ニューヨーク市立大学マウントサイナイ医学部研究員。その後、都立広尾病院内科医長、慶應義塾大学医学部内科専任講師(消化器内科)を経て、現在、慶應義塾大学看護医療学部教授(慢性期病態学、終末期病態学担当)。
■著 書
『患者の力 患者学で見つけた医療の新しい姿』(春秋社 2014年)
『患者の生き方 よりよい医療と人生の「患者学」のすすめ』(春秋社 2004年)

※「ニーバーの祈りの言葉」 アルコール依存症者の集会AAで唱えられる言葉
神様 私にお与えください
自分に変えられないものを
受け入れる落ち着きを
変えられるものは 変えていく勇気を
そして二つのものを 見分ける賢さを