<トピックス>

全国難病センター研究会 第26回研究大会(東京)開催
新しい難病法施行を経て難病相談・支援センターの果たす役割や活動の方向性を考える

2016年11月5日〜6日、「全国難病センター研究会 第26回研究大会(東京)」(共催:全国難病センター研究会、一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA))が新宿文化クイントビルで開催されました。同研究会は、2003年から各都道府県に開設されてきた難病相談・支援センターの方向性の確立、運営・相談に従事する者の知識や技術等の資質向上、そして医療・福祉・行政関係者と患者・家族団体とのネットワークの構築を図るために各地で開かれてきた取り組みです。
全国各地の活動報告や理工学系の研究者による発表も実施

今回の研究大会では、まず、厚生労働省から報告が行われ、2015年1月に施行された難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)をふまえた医療提供体制のあり方や、難病患者が受けられる福祉サービスについての最新情報が提供されました。「制度の枠組みはできたが、現場の行政担当者の理解がまだ行き届かず、現実には難病患者は利用しにくい」といった指摘が参加者からあり、課題を共有する場面もありました。

パネル発表では、熊本地震における熊本県難病相談・支援センターの活動報告をはじめ、各地の難病相談・支援センターや難病患者支援に取り組む団体による発表が行われました。さらに、重度障がい者・児も楽しめるコンピュータゲームや、障がい者や高齢者にも扱いやすいテレビリモコン、重症難病患者のコミュニケーション支援者養成講座の紹介など、理工学系の研究者による発表もあり、多くの参加者が熱心に聞き入っていました。

気軽に発表できる新しい取り組みも

シンポジウムでは、「治療と就労の両立支援を考える」をテーマに、がん患者・精神障がい者・難病患者の就労支援に携わってきた専門家による発表とディスカッションが行われ、難病だけでなく、がんや慢性疾患の患者、障がい者などだれもが柔軟に働くことのできる環境の実現を目指す方針が確認されました。 また、“もっと気軽に発表したい、多くの発表を聞きたい”との声に応えて、今回初めての試みとして「5分間プレゼンテーション」「テーマ別ランチルーム」が行われ、好評を博しました。

難病法が施行され、難病相談・支援センターが改めて注目される中で、2日間にわたり多様な発表や活発な議論が展開された今回の研究会。全国でさまざまな患者団体・地域難病連が相談や支援の充実に向けて努力していることや、その興味深い取り組みを知り、ノウハウや思いを共有して交流を深める重要な場となったようです。

全国難病センター研究会を牽引してきた2人のコメントから

全国難病センター 研究会 会長
国際医療福祉大学 副学長
糸山 泰人 さん

今回も、熱気のこもった真剣で重要な発表と議論が行われたと思います。2015年から、助成の安定・医療の研究の進歩・療養生活の改善を大きな柱とする改正難病法が施行され、新たな課題も明らかになってきた状況で、医療の提供体制や福祉の利用、就労支援などに関する新しい情報や動きを聞くことができました。大事なのは制度の間を埋めるきめ細かな支援です。その点で難病相談・支援センターの役割は極めて重要だと考えます。みなさんの発表を聞いて、さまざまな問題がなお山積していることを実感しました。また、5分間プレゼンテーションや、テーマ別ランチルームといった新しい取り組みなどを通して本音も聞くことができ、専門家の提言も重要であったと思いました。

難病相談・支援センターは全都道府県に設置されましたが、その中身や果たすべき役割、何を重視するかという方向づけが重要となる段階にきています。それぞれの地域でさまざまな経緯や特色がある中で、そろそろ共通するものをまとめていきたいと考えていますので、ご協力ください。

全国難病センター研究会 事務局長
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)
伊藤 たてお さん

難病患者に対する相談や支援について、学問として体系づけしていくことも必要ですが、本来ピアサポートとはそのような体系の中から生まれるものではなく、当事者としてのさまざまな思いが活動の力となるのだと思います。私自身、“何もできなくて申し訳ない”と気になっていた病気のひとつが、今回、パネル発表された「表皮水疱症」でした。専門家でも研究者でもない私たちが、同じ当事者として力になれず申し訳ないと感じるこの思いが、難病相談には必要なのだと思います。

JPAとしては、難病相談・支援センターは、医療機関や行政とは異なる存在で、しかも患者団体の相談会のレベルより質も高めていきたいと考えていました。そこで、この全国難病センター研究会を立ち上げ、また、さまざまな患者団体の設立も応援してきました。難病相談・支援センターを支えるのは患者団体であるべきだと考えてきたからです。

学問は学問としてあるべきですが、人間はそれだけで生きていくものではありません。患者でもあり生活者でもある場面、孤独に陥っている場面、医療や行政を信じられなくなっている場面、さまざまな場面で患者さんたちを受け止めていくことが患者団体の役割であり、難病相談・支援センターの相談の基本だと思います。そして、何よりも人とのつながりを大切にしていってほしいと思います。当事者を支える専門的な方々や行政関係者、医療者の方々と、どう有機的に効率的に結びついていくかというところも重視しながら、これからも活動を続けていきましょう。

主なプログラム
厚生労働省 報告
■難病の新しい医療提供体制について
 遠藤明史(厚生労働省健康局難病対策課 課長補佐)
■総合支援法による難病患者の福祉サービス利用
 日野原有佳子(厚生労働省障害保健福祉部企画課 課長補佐)
パネル発表
■熊本地震における難病相談・支援センターの活動報告
 吉田裕子・田上和子(熊本県難病相談・支援センター)
■ゲームを活用したQoL向上の取り組み
 門脇和央(島根大学総合理工学研究科)
■新しいテレビリモコンの開発
 松尾光晴(パナソニックエイジフリー株式会社)
■被災地熊本での『重症難病患者のコミュニケーション支援者養成講座』開催報告
 石島健太郎(NPO法人ICT救助隊/日本学術振興会 特別研究員)
■相談事例を総合的難病対策の推進にどう生かすか 患者会の相談活動、「ピア・サポート」の役割
 ―医療・福祉の実践的ネットワークづくりを今こそ―
 水谷幸司((一社)日本難病・疾病団体協議会)
■膠原病患者の生活実態アンケート調査報告
 ―北海道・東北地域調査より―
 永森志織(全国膠原病友の会、NPO法人難病支援ネット北海道)
■誰も知らない稀少難病・表皮水疱症
 〜患者会が取り組む情報連携と啓蒙教育〜
 宮本恵子(NPO法人表皮水疱症友の会DebRA Japan、(一財)北海道難病連)
■教育機関における難病患者を想定した災害訓練の報告
 岩本利恵(活水女子大学看護学部看護学科)
■難病相談支援センターと相談支援員に関する 研究の報告(第1報)
 川尻洋美(群馬県難病相談支援センター)
5分間プレゼンテーション
■NPO法人PADMのこれまでとこれから
 林雄二郎(NPO法人PADM)
■難病や障害と闘う子どもたちのためのプロジェクト紹介
 増田靖子((一財)北海道難病連)
■市町村と協働した難病支援活動
 首藤正一(NPO法人宮崎県難病支援ネットワーク)
■アンビシャス会報誌の体験談・難病川柳・短歌の募集案内
 照喜名通(沖縄県難病相談支援センター)
■書籍を利用した難病制度の普及活動
 浅川透
■キャリアカウンセラーにおける個別相談(就労)吉田裕子(熊本県難病相談・支援センター)
■就労支援における福祉サービス活用の普及
 中村めぐみ(国立障害者リハビリテーションセンター)
シンポジウム「治療と就労の両立支援を考える」
■がん対策の就労支援
 須田美貴(労働相談須田事務所 所長)
■精神障害の就労支援
 中原さとみ(桜ヶ丘記念病院)
■難病の患者の治療と就労の両立支援
 春名由一郎(全国難病センター研究会 副会長/
 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者職業総合センター)
テーマ別ランチルーム」
「就労支援」「コミュニケーション支援」「センター運営」のテーマ別に、昼食をとりながら情報交換を実施

※敬称略、一部タイトルを短縮しています。